コラム
2022年3月4日「トーシンブランド」設立を目指して
トーシンにお世話になり3年程経ちますが、いろいろな仕事をさせてもらう中で「トーシンのお客様」について考えることが多くなりました。総務部に所属しているということで、実際の物作りに携わることはほとんどありません。ですが研修会等を通してトーシンが「高級感」を自社の売りとして仕事をしていることはなんとなく分かってきました。
私事になりますが、私は買い物が大好きです。百貨店が好きで、洋服や鞄、靴を見て回るのが至福の時間です。毎月のカードの請求がお給料を超えているなんてことはざらにあります(笑)。SNSを見ていると欲しいものが山ほど出てきますが、例えば新しい鞄を買う時、「百貨店の中のどの店のものにしようか」から入ります。百貨店に入っている店ですから、あまりお安くはありません。お金に余裕があるわけでは全くないですが、それでも手に入れた時の満足感は言葉では言い表せません。お金という大きな犠牲を払ってでも私にとっては価値のあるものなんだと思います。
「鞄なんて最低限の私物が入って持ち運べるものなら何でもいい」という人ももちろんたくさんいるでしょう。なぜそんな金額を出して鞄を買うのか?と理解し合えない人もいるのはよく分かります。ですが私はブランドという「付加価値」に魅了され、この先もおそらく、鞄に関しては、「できるだけ安いものを!」という発想で選ぶことはきっとないと思います。「鞄」を買っているというよりかは「ブランド」を買っているという方が感覚的に近いような気がします。その意味では、街中には鞄が溢れていますが、私が鞄を買う上で選択肢は最初からかなり絞られているわけです。
トーシンも同じなのでは、と思います。「高級感」を売りにしているということで、「とりあえず色がついていたらいいからできるだけ安く」を求めるお客様のニーズに応えることはおそらく難しいです。もちろん、トーシンの営業の方々はお問合せいただく全ての声に反応し真摯に対応されていますが、多少お金を出しても高級感という付加価値が欲しいというお客様が、本当に私達のお客様となるのではないかと思います。
ですが当然ながら、金額に見合うだけの品質を「付加価値」として上乗せできなければ、顧客の獲得とはなりません。私が鞄を買う時、返品交換できないので手に取ってよく確認してください、と店員さんに言われますが、まあ軽く手に取ることはしますが正直そこまでじっくりと細部まで確認するようなことはしません。それはブランドへの信頼があるからです。このブランドで裁縫に問題があるなんてまあありえないだろうと思うからです。実際今まで何かトラブルに見舞われたことはありません。言い換えると、それだけの信頼が得られなければブランドにはなれないのです。
トーシンはまだ「ブランド」ではないと思います。私は製造工程には携わっていませんが、作られた製品の良し悪しを検査する仕事をさせていただいています。私のミスで不良品がお客様のもとにいってしまい、お叱りを受けることもあります。私がトーシンにお世話になる遥か前から、長年お付き合いを重ねてきたお客様からの信頼を、こういう1件1件で崩してしまうことになり兼ねません。前より早く検査できるようになったとか、見落としが減ったとか、プラスのことよりも、自分が良品だと判断したものがお客様から戻ってきた時の「自分の目まだまだだな」と思う悔しい気持ちが、仕事に向かう原動力となっています。私個人のことだけでなく、会社全体としてトーシン内でも、検査手順や見方を変えることで見落としを減らせないか、そもそも不良品を作らないために製造工程内でどう工夫するか、「答え」のない難題を解きお客様からの信頼を得るため一丸となり日々努力しているところです。
お客様からの信頼を勝ち取るというところは、まだまだ頑張らないといけないと思いますが、ゆくゆくはお客様に細かくチェックされなくても、「トーシンが作っているものなんだから大丈夫」という信頼を置いてもらえるような、「トーシンブランド」を設立できることが最大の理想なのかなと、消費者側の視点も踏まえながら、ぼんやりと考えていました。かなり大きな理想の話になりましたが、私が日々1つ1つの製品を確実にジャッジし自信を持って良品をお客様にお届けするということが、かなり小さい一歩、でもその理想へ繋がっていくということは、間違いなさそうです。